NANOTECHNOLOGY BUSINESS CREATION INITIATIVE
ナノテクノロジービジネス推進協議会
ナノテクノロジーをビジネスに



ナノカーボンFAQ

HOME イベント・関連情報 ナノカーボンFAQ 関連リンク
HOMEナノカーボンFAQCNTに発がん性はあるのでしょうか?



ナノカーボンFAQ

作成 2017.2.8 改訂2018.2.1

CNTに発がん性はあるのでしょうか?

■回答

化学物質の発がん性を見積もる最も権威ある機関は、WHO(世界保健機関)の一組織であるIARC(International Agency for Research on Cancer、国際がん研究機関)です1)
ここでは2014年に行われたIARCによるCNTの発がん性評価について説明します。

1. IARCの分類
IARCは、新規物質や論文などで提起された物質について、「ヒトに対する発がん性の確からしさ」を規定しています。
この確からしさとは、対象物質の発がん性の強さやリスクの事ではなく、「発がん性を示す根拠の強さあるいは弱さ」、つまり「確からしさ」を示しています。その分類は厳密に行われており、世界各国から参加した多数の専門家が、信頼すべき多くの論文(必ず査読されている)を抽出して評価した上で、その確からしさを規定していきます。
各グループの物質数、物質(例)は以下の通りです2)3)



2011年には携帯電話の電磁波について、2Bに分類した事が話題になりました。
最近では2015年10月、牛や豚肉等の赤肉(レッドミート)と加工肉(ハム、ソーセージ等)の発がん性について、それぞれグループ1、グループ2Aと発表し、現在に至るまで世界的に大きな議論を巻き起こしています。

また2016年4月には内閣府の食品安全委員会による報告をきっかけに、加熱調理した野菜に生成されるアクリルアミドが、IARCの評価ではグループ2Aに分類されている事が改めて取り上げられています。要は「野菜炒めを食べると、恐らく発がん性がある」というのです。
いずれのケースも、リスク評価には言及しておらず、これまでの報告を評価した上で「発がん性の確からしさ」を示したものです。


2. 分類の考え方
IARCによる分類の考え方は、Preamble(前文)に述べられています4)
論文で示されたヒトまたは動物実験の結果に対する評価に対し、各々の確かさをsufficient(十分) limited(限定的) inadequate(不十分)、Evidence Suggesting Lack of Carcinogenicity (ESLC=データは発がん性を示すには不足)の4段階のグループに分類していきます。
これをまとめると以下の表となります。



3. CNTに対する評価
2014年9月末、IARCの世界10か国21名の専門家からなるワーキンググループが、4つのサブグループに分かれて、それまでに世界中で発表された「信頼できるCNTの毒性評価論文17報」の内容を精査し、前項のような考え方で「ヒトでの発がん性の確からしさ」を分類しました。

その結果は以下の通りです。
 @MWNT-7(多層カーボンナノチューブの一種) =グループ2B
 ラットの実験で中皮腫と腺腫を引き起こすので、ヒトに対して発がん性物質である可能性がある。

 AMWNT-7以外のMWCNT(多層CNT)、SWCNT(単層CNT)=グループ3
 一貫した結果が出ていないので、発がん性を分類できない。


4. IARCの見解
(1)前項の分類についてIARC WGは「世界的な毒性学者による大多数のコメント」として以下の解説を発表しています5)
「これら(発がん性実験の結果)を、CNT特有の発がんのメカニズムの証拠とは考えられない。」
「異なる種類のCNTに、首尾一貫した発がん性の証拠が無いことは、(MWNT-7以外の)他の種類のCNTへ一般化する事を不可能にしている。」

(2)つまりMWNT-7に見られたげっ歯類での発がん性について、以下のように総括しています。
「CNT固有の発がん性とはいえない」
「CNTには多様性があり、1種類を持ってすべてのCNTには適用できない」

(3)2017年、同WGはモノグラフ(専門書) Vol.111 Some Nanomaterials and Some Fibres中に、「CNTの発がん性リスク」について160ページに及ぶ詳細を発表しました6)
その結論は前3項@Aの通りで、変更はありません。。